2021.2.27 現代ビジネス
井上尚弥の弟・拓真のドロ沼不倫、テレビのワイドショーがほとんど報じない「驚きのワケ」

世界的な人気プロボクサー、世界王者・井上尚弥の弟で、世界ランカーの井上拓真に不倫スキャンダルが報じられ、ファンを騒然とさせた。
「ボクシングと関係ないプライベートなこと」と言う良識派もいるが、「週刊女性」が「兄も黙認していたドロ沼関係に“慰謝料”も発生」と報じたダブル不倫は、生々しいキス写真なども含め、「ひどい話だ」、「ガッカリした」との感想が多数出ている。中には「兄に迷惑をかけないでくれ」と言う者までいる。
アスリートのゴシップはどう扱うべきなのか。
拓真は今年1月、東洋太平洋タイトルマッチに勝利した際、一部メディアで「実は昨年、結婚して長女が生まれていた」という話が報じられた。このことを隠していたのは「プライベートをわざわざ公にする必要はない」との判断があったからだということだったが、実際にはそうでないことが露呈した。なにしろ不倫相手には離婚を約束、生まれたばかりの子供を見捨てるとも言っていたというのだ。
8年間もの交際を経て結婚した妻は、拓真の「幼馴染の女性」で、昨年3月に予定していた挙式は新型コロナウイルスの中でキャンセルになってしまったが、夏には入籍して長女も生まれていたということだった。
しかし、その一方で拓真は、結婚よりずっと前の2019年3月、兄・尚弥の紹介で知り合った既婚者女性と関係をしていたのである。ちょうど結婚した昨夏の時期にも、拓真が女性を温泉旅行に誘ったという。女性は昨年8月末には軽井沢で行われた拓真のチーム合宿にも同行、拓真は妻の出産した日も、女性と夜を過ごしたとされる。
報道では、拓真が「離婚したら子どもは妻に引き取ってもらう」と女性に話していたことで、女性は自分の夫に離婚を切り出していたとされ、昨年12月にはその夫が拓真に慰謝料を求める泥沼に。
これに拓真は激怒して女性に「お前のせいや」とメール。その後は、拓真の母親までもが女性宅に行ったことが生々しく明らかにされてしまっている。拓真は事務所を通じて謝罪コメントを出しており、事実を認めたような形だ。
芸能記者としてこの点を見れば、大手芸能とマネジメント契約もしている拓真だけに、マネジメント会社が「タレント管理として対応を誤った」という印象はある。女性やその夫の感情を逆なでしないよう、もっと上手な解決の仕方はあったはずだ。
なにしろ井上兄弟のイメージはかなり良かった。父親・真吾さんは子育て論の著書も出しており、理想の一家というイメージもある。兄・尚弥が現在ほどブレイクする前、一部で「サインや記念写真を求めるファンへの対応がときどき冷たいことがあった」という話があったが、いまでは「そんな話、ウソに決まってる」と言う人がいるほど好感度は上がった。
タレントのイメージというのは、印象がよくなるほどに好循環が起き、そのイメージが実像を超えることもある文字通りの「人気商売」だ。実のところ、そうした人気が収入に結びつくのは、なかばタレント的な力量が求められるプロアスリートも同じだ。
井上兄弟の仕事はボクサーであるのだから本来、強ければ、他のことは彼らの評価と関係なく、性格が良い悪いとか、私生活の素行も競技と無関係である。しかし、彼らはアマチュアではなくプロであり、「人気」を得ることも仕事のうちだ。
先日、井岡一翔が入れ墨の問題で非難を浴びた際、尚弥はツイッターで「刺青が『良い悪い』ではなくJBCのルールに従って試合をするのが今の日本で試合をする上での決まり事。このルールがある以上守らなければね」と記し、大絶賛を浴びた。その言葉に共感して応援者が増えれば、試合の視聴率や観戦チケット、広告出演料が上がる。
特に日本では、他国と比べてもアスリートに清廉な人間性を求める傾向がかなり強い。アメリカでは事情が少し違う。飲酒運転や暴行事件を起こして度々逮捕され、被害者への慰謝料の支払い約束を果たさず再逮捕され、現在も裁判中の身である元4階級世界王者のエイドリアン・ブローナーが2月20日に試合をしているのだ。私生活で悪党でもリング上の仕事は関係なく、ファンもネット上で強いか弱いかを意見している。
一方、日本では世界王者の拳四朗が昨年、酔って他人の車を傷つけたことで、予定されていた試合は中止になり、日本ボクシングコミッションから3カ月のライセンス停止と30万円の罰金処分を受けている。競技外のことでも競技団体が厳しい処分をするのである。
アスリートの不倫騒動といえば、昨年9月にリオ五輪銅メダル獲得の競泳選手、瀬戸大也が不倫報道で所属先の契約を解除された上、日本水泳連盟から活動停止の処分を受けている。こちらはアマチュア選手であるが、競技者資格規則の「スポーツマンシップに違反」に該当したとしての処分だった。正直、かなり強引な解釈である。
「スポーツマンシップ」の定義は、曖昧ではあるものの、基本的にはスポーツを起点にした原則であって、あくまで競技上の礼節、マナーを守らせるものだ。日常生活で人に挨拶をしなかったり、無礼な態度であっても、スポーツマンシップを理由とした処分対象にはならないはずだ。連盟の処分は瀬戸へのバッシングを収める効果を期待してのものだったと見られるが、私生活の不倫での処分は規則の乱用だ。
プロボクシングにはもっと明確に「倫理規定」があり、「社会秩序を乱す行動や社会から非難される行動」を禁じるとしているから、逆にこっちはルールを適用すれば、不倫スキャンダルでも「社会から非難された」なら処分されなければならなくなってしまう。
そのあたりは処分する側のさじ加減ひとつというのが現実だ。極端な話、拓真の不倫について連日、ワイドショーで取り上げられていたら、おそらくは日本ボクシングコミッションは、この倫理規定で処分した可能性が高い。
は、なぜ拓真の不倫はワイドショーなどで取り上げられなかったか。ひとつには兄に比べて知名度が低いというのもあるが、もうひとつ決定的な理由がある、と情報番組のディレクターを20年以上やっているテレビマンが語る。
「今回の不倫ゴシップ、ひとつの週刊誌しか報じていないからです。多くの情報番組ではゴシップなどを扱うとき、番組自体へのリスクを避けて、一部メディアしかやっていないものはなるべく取り扱わないんです。もしスポーツ紙が一斉にやっていたら大小の規模は別として間違いなく取り上げたと思いますよ」
つまりワイドショーは、他のメディアの顔色を見て判断しているということ。だから扱うときは集中砲火になり、扱わないときは一斉無視になりやすいのだ。では、どうしてスポーツ紙が拓真のゴシップを扱わなかったのかといえば、これはスポーツ紙のボクシング担当記者が、「兄・尚弥の取材がやりにくくなるから」と言った。
「ボクシングを扱う運動部から芸能記者のほうに「これは無視で」とお願いすることもなく、芸能面のほうが独自に『やらない方がいい』と判断してますね。マスコミがもっと大騒ぎしたら無視できないですが、できたら井上兄弟とは良い関係でいたいので。井上兄弟の取材に行っても、この件は禁句みたいなもので誰も質問したりしないでしょう」
兄の人気がかなり高いため、天秤にかければ、「尚弥の記事が載る」ほうが「拓真の不倫記事」より価値が高いのである。もっとも、それでも「週刊女性」の記事のインパクトは大きく、ファンの間では知れ渡っているから拓真の人気の低下は否めないだろう。ボクシング界も処分せず、マスコミのほとんどが黙殺していても、そこを背負うのがプロの宿命だ。
拓真は優れたボクサーで、兄のような派手なKOを量産するスタイルではないが、テクニックもフィジカルも一級品で、気の強さは兄以上のものがある。それでも潜在能力はまだ半分も試合に出ていないのではないかとさえ思う将来の楽しみな選手だ。
まだ25歳、人間的には未熟な面も多いはずで、今回の大失態で学び成長していけばよいと思うが、一点、懸念する面もある。それは良くも悪くも彼を守るのが井上の親族であることだ。指導者は父親、不倫問題の対処は母親が出て行ったというのを見ても、それは分かる。
実は大手ジムでは親族をチームに入れないことを原則にしているところもあるのだが、それは、選手自身を親族から離して「他人」のなかに投げ入れ、社会性を身に着けさせるという効果があるからだ。亀田兄弟の父親が息子かわいさのあまり身勝手な振る舞いをして永久追放になった例もある。
親族というのはときに止められた失敗も見過ごしてしまうケースを生みやすい。最強一家のチーム井上でも、合宿に同行した不倫相手を排除できなかったのが失敗だった。
尊敬するアスリートが人間的にも優れていてほしいと思うのはファン心だが、競技での能力と人間性はまったく別のスキルである。どんなにリング上で強くても、人間性すべてが磨かれる環境にあるとは限らない。行儀のよいコメントをしていても、それはファン獲得を意識してのものであることだって多々ある。見る側もそこをもっと認識しておけば、もう少し冷静に選手を見られるのではないか。
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